『暮しの手帖』というタイムマシン 

「広告を入れない」

 創刊号から変わっていない『暮しの手帖』のもう一つの特徴……「広告を入れない」という決定的な方針がありまして、それはまあナニゴトにも忖度しない出版人でありたいということなのですが、本当に 70 年もよくぞ生きてこられたと思います。 

書店での販売だけで食べていっているなんて、広告を 取ることで生きている雑誌社にいた僕なんかは、奇跡のように思うのです。これからの手帖社はどうなるんだろう? いつもドキドキして今を生きているというのが正直なところです。前にいた会社以上に、雑誌の売れ行きに一喜一憂しているんです。町から書店が消えていくことを、寂しさだけではなく、痛手として感じています。 どうしたら読者を手離さずに作っていくのかだけを真剣に考えているわけです。クライアントの機嫌をいちばん に考えがちな、ほかのメディアとは、これだけでも一線を画していると思います。 


第1世紀79号(1965年) 協力 暮しの手帖社

第1世紀93号(1968年)「もしも石油ストーブから火が出たら」の一場面
 暮しの手帖別冊『暮しの手帖初代編集長 花森安治』より 協力 暮しの手帖社
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