狩野友信とともに(2) フォンテーヌブロー宮殿蔵「紅葉に青鳩図」への道  [明治を生きる友信の仕事 縮緬本の世界 フランス語の寓話に挿絵を]

『ラ・フォンテーヌ寓話選』(1894年) / 『フロリアン寓話選』(1895年)

東京美術学校時代のもう一つの仕事として、フランス語の縮緬本とも呼ばれる二種類の版本二種類、各上下巻に挿絵を描いています。

来日して築地居留地に住んでいたフランスの民間人のピエール・バルブトーという人は、野心家で、他のフランス人のように、お雇い外国人、あるいは駐在員などとして来日したということではなく、自分で来日しました。バルブト―については、慶應義塾大学の仏文の高山晶先生が本を出されています。

バルブトーが出版することを思いついた『ラ・フォンテーヌ寓話』は、フランスでよく知られており、私もスイスでフランス系の寄宿学校にいた時に、「葦と樫の木」Le chêne et le roseau を暗唱させられました。フランス語圏では、おそらく中高生は覚える、そういう韻文です。挿絵もシャガールシャガールはじめいろいろな人が描いています。

友信はバルブトーに協力して、挿絵を何枚か描いただけでなく、おそらく複数の画家を紹介もしたのではないかと思います。

『ラ・フォンテーヌ寓話選』「カエルとネズミ」 狩野友信筆

これは私がパリのフランス国立図書館で調べた『ラ・フォンテーヌ寓話』です。
「友信」という落款(サイン)と「一青齎(いっせいさい)」という印が摺り込まれた「蛙とねずみ」という話です。

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