石澤良昭教授 記念講演会「なぜフランス語か」(1)初めてのカンボジア -フランス極東学院から学んだ「アジア研究」

あとで思うと、1960年代当時、ベトナムとカンボジアには、 戦乱の予兆があったのです。のちの、ベトナム 戦争(1964~75年)とカンボジアの政治混乱と内戦(1970~93年)です。先生は旅をしている足元のアジアの現実をよく見ておくように、との諭しでした。ここにはリーチ先生の教育的深謀遠慮があり、単なる語学研修ではなかったことが判ったのです。

リーチ先生の引率による、この学生海外研修 は1964年にベトナム戦争勃発のため中止となりました。上智大学のアジア地域研究は、こうした学生交流から第一歩が始まったのです。

ポール・リーチ先生(Professeur Paul Rietsch, SJ)と 学生時代の石澤先生

もう一つは、ヴォルテールの言葉です。

ルネッサンス百科全書派のヴォルテール(Voltaire、本名 François Marie Arouet)の作品『カンディード』の物語の最後のところで、哲学者パングロスが楽天的なことを述べたのに対して、カンディードは
「何はともあれ私たちの畑を耕さねばなりません(Il faut cultiver notre jardin.)」
と言います。

jardinとは畑ですが、「私たちのやりたいこと、課題をしっかりと追求して、完成しなければならない」、そういう意味であろうと思います。
この言葉が私は非常に好きで、いつも元気をもらっています。

この二つを原則として、様々な先生方や皆さまとチームを組んでやってきました。

なぜ、私たちはフランス語を学ぶのか?英語が国際通用語として世界に普及し、フランス語圏(francophonie)地域が地盤沈下しつつある現在、なぜ私たちはフランス語を学ぶのか、その理由と学習後の世界交流活動を考えてみたいと思います。

アンコール・ワットの中央塔にご来光が少しずつ昇ってくる
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