爺さん研究者、人生を振り返る  

4 定年前後の諸活動

 2011 年に東洋英和女学院大学を退任してから、自分の活動領域を広げていくという傾向は、さらに格段に強まります。 これはかなり長期にわたり、前期と後期に分けられます。

 前期では、以前同様、研究を主軸にしながらも、進んで外に飛び出し、現地の調査研究、共同研究、シンポジウムへの参加、など多彩になりました。その一例として、日仏社会学会の共同研究で、その2年越しの研究が「日仏共同研究報告書 高齢社会における生活の質(Qualité de la vie au sein de la société vieillissante)」(1998年)に刊行されました。

 もう一つの具体例は、単独現地調査として、メキシコ、オアハカ州の寒村にあるインディヘナ村に出かけたりしたことです。西欧文明から隔絶したような山の中、村長から今夜は日本文化の夕べにしよう、との一言で、実は一緒に同行していた妻が、小型の琴の調べを奏でたことが好評で、翌日のインディヘナ青年の意識調査は大成功でした。その結果は未発表ですが、ここでは、青年たちが実直で真面目、世界の状況をかなり正確に把握しており、とりわけ米国への関心が高いことを記します。またそのオアハカでの思い出は、ゲラゲッツアという楽しく地方色豊かな種々の祝祭踊りが、サッカースタジアムの競技場のような空間で展開されたことと結びついています。


メキシコ、オアハカ州の寒村にあるインディヘナ村 (2022年)
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