日本としては、もはや一方的に与える関係ではなく、お互いに得るものがある戦略的なパートナーシップが必要です。50年以上JICAが大事にしてきた「人を介した協力」といったソフト面での支援は、今後も重要だと思います。
「危ない」「病気が多い」「清潔じゃない」といったアフリカへの偏見は、実際とは異なります。そこには普通に人が暮らしているんです。ナイジェリアの味の素や、ケニアでの日清チキンラーメンのように、日本企業の進出は増えてきています。そして日本企業がもっとアフリカに進出し、互いに成長できる関係を築いていってほしいと期待しています。上智で授業をさせてもらったこともあるのですが、国内志向の学生が少なくないことが気になりました。もっともっと、アフリカに行ってみてほしいです。

◆ 令和の緒方貞子さんにもなれたキャリアを積まれた人材だと思いますが、人生後半戦はどう歩んでいくおつもりですか?
昔は国際機関で働くことを極めたいと思っていましたが、今は通訳の仕事を通して、いろんなことを学ぶ意欲をかき立てられています。兼業が認められているんです。ありがたいことに、JICAで勤め始めて以来、国家元首の方々と日本人の間の通訳を仰せつかる機会が少なくありませんでした。近年は通訳を副業とすることで、いろんなフランス語と日本語の繋ぐニーズを発見し、通訳という立場で関わらせてもらっていることに感謝しています。もちろんJICAで働くものとして、開発や日本の外交・国益にも資する存在でありたいと思いますが、個人個人のつながりをより大事にしたいと思いが強くなったのは通訳を始めてからかもしれません。セネガルに、「人は人にしか救えない“NIT NIT MOY GARABAME(L’homme est le seul remède de l’homme)”というウォロフ語のことわざがあるのですが、これをいつも心の拠り所にしています。