par hasardをpas à pasで歩む   ンジャイ林恵美子さん(1994年卒)

最近よく、通訳・翻訳はAIにとって変わられるという人がいます。でも、私は未だ懐疑的です。同時通訳は的確さとスピードが求められます。そして優秀な通訳者は、単に言葉を訳すだけでなく、言葉の裏にある意味や文化的なニュアンスを正しく表現するのです。私が学生だった頃に、ロシア語通訳者として有名で当時のエリツィン露大統領のお気に入りだった米原万里さんは、絶妙の通訳で、日露関係の悪化を防いだと言われます、笑。私もそんな通訳を目指したいのです。

JICA理事長とブルキナファソ大統領の会談通訳(2013年)©︎JICA

そして、そんなことを考える時に、私は必ず30年前のメランベルジェ先生の授業を思い出すのです。先生は、こう教えてくれました。「C’est la vie 」は(それが人生だよ)じゃない。「C’est la vie 」は、(しょうがないよ)だって。
「直訳しても伝わらない。単なる諦めではなく、そこに込められた感情がある」。一つ一つの言葉のニュアンスを大切に理解し使うことの重要性を繰り返し教わりました。田中幸子先生のAvec Plaisirも自然なフランス語を自然に身に付けられたのでよかったですね。今でも、Martine, Laurent, Bernardと言った登場人物の名前をそらんじることができます。多くの大事なことをフランス語学科で学んだことを、私は今でもよく感謝しています。

もっとも、私のフランス語学習の動機は国際関係だけでなく映画にもありました。学生時代は、映画運動家で岩波ホール支配人だった高野悦子さんに憧れました。今はこどもたちと一緒に新海誠さんの「君の名は。」のようなアニメーション映画の繊細さに驚嘆しています。今、フランスでワンピースはじめ、日本の漫画やゲームソフトが大人気なのがよくわかります。そんなわけで、学生時代に傾倒したヌーヴェルバーグやRaymond Depardonのようにドキュメンタリー映画を作ってもみたいし、数年前は、セネガルでお菓子屋を開くのもいいなと思っていました。これからも、par hasardを恐れず進んでいきます。

ンジャイ林恵美子さんのプロフィール

1994 年フランス語学科卒業。
1995 年パリ政治学院 Science Po CEPコース修了。
1996 年パリ第一大学政治経済学部公共政策学科修士課程 DEA 修了。
仏系コンサルタント企業を経て、1998 年 ILO(国際労働機関)ジュネーブ勤務。
2001 年からJICA(国際協力機構)勤務。
本部、セネガル、ブルキナファソ、マダガスカルでの勤務を通じて、仏語圏アフリカを中心に数多くの ODA 案件に携わる。

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