1988 年フランス語学科卒業の河野景子さん。ある時はフジテレビの花形女子アナでパリ特派員、またある時は相撲部屋の女将として、時の人であり続けてきた。2019 年 3 月に出版した『こころの真実 -23 年 のすべて-』で、人生のフェイズ 3 入りを宣言した直後に訪れたコロナショックで、「頑張り屋で走り回ってしまう」人生に久しぶりの休息が訪れたという。2024 年を、「リスタート」の年と位置付ける河野さん。 今、どんなことに挑もうとしているのか。
■11 月下旬、恵比寿ブルーノートの朗読イベントは満員で大盛況でした。フェイズ3で脚本家市川森一さん「古事記天語り」の朗読に挑戦したのは、なぜですか?
私が生まれ育った宮崎には古事記にゆかりのある場所が沢山あります。 天孫降臨の伝説の地や、幼い頃遠足で訪れたみそぎ池など。そんな訳で古事記は私の潜在意識にありましたが、齢 を重ねるうちに、古事記について深く掘り下げて勉強してみたい気持ちになり、古事記を読んできました。
古事記は日本の神話で多くの神事の由来になっていま す。私は 23 年間のフェイズ 2 で、収穫を占う神事とも言われる相撲の世界にいて、古事記への関心が年々高まっていました。フェイズ3に入り、ついに、古事記を自分の人生の中に取り入れてみたいと思い、挑戦しました。
■フェイズ 2 で相撲界に長年いらっしゃったからこそ見えてきたものがあるのですね。なぜ多くのフランス人が日本に魅かれるのか、わかってきましたか。
様式美に対する理解が深いのです。国技の相撲は勝負ですが、伝統文化の様式美がふんだんに盛り込まれてい ます。たとえば、力士は土俵にあがって何度も仕切りを行います。立ち合いまでの呼吸を合わせながら精神的な 戦いが始まっているのですが、これをフランス人は「仕 切りには意味があるんですよね」と、ちゃんと理解してくれるんです。「なんで早く始めないの」と言わない(笑)。 そこに意味があるとわかってくれるのがフランス人だと思います。全体がどうなっているのかを、とても大切にし学んでいくのは、深い伝統、歴史、文化があるフランスだからこそだと思います。