日本にいて楽しめる名画展 それを実現させる仕事力
上智大学フランス語学科同窓会会報No. 45(2025年2月25日)に抄録を掲載
美術展プロデューサー・ジャーナリスト
今津京子さん(1983年卒)
※掲載内容は発行当時の情報です。
◆ 美術展プロデューサーの仕事とは
美術展プロデューサー ― 聞きなれない肩書きに多くの方から質問される。実際には何をしているのですか、と。2024年は、国立新美術館で開催された『マティス 自由なフォルム』、そして国立西洋美術館で(2025年2月現在)開催中の『モネ 睡蓮のとき』展に携わった。
展覧会の仕事を始めて40年以上が経っている。関わり方はそれぞれ異なるが、深く携わったものだけでも数十は下らないだろう。近年は、周囲の方々から「経験してきたことを書いて残したらどうか」と勧められるのだが、黒子の仕事であるし、何しろまだ現役だ。他社と現場で競合もする。今回は許される範囲で書いてみるが、曖昧な言い方になったらばそれは想像で埋めていただきたい。
まず基本的なことだが、展覧会というのは一人では成立しない。前述の展覧会の場合、マティス展は主催する読売新聞社チームの一員として、モネ展は日本テレビ放送網チーム(正確にはNTVヨーロッパ)の一員として関わった。この規模のものになると、実に多くの人間が携わる。その中でそれぞれが様々な役割を担うわけだが、私の場合は、パリをベースにしていることもあり、展覧会の企画・制作(プロダクション)に最も近い立場にいるので、美術展プロデューサーという肩書きを名乗っている。

展覧会監修者で前ニース市マティス美術館館長の
クローディーヌ・グラモン氏と。
2016年に企画に着手し、コロナ禍で延期となったが、
無事に開催にこぎつけた。