理工学部同窓会は、9月24日、世田谷区砧のNHK放送技術研究所の見学会を理事、企画・広報委員の有志10名で「次世代メディア検討会」として実施しました。
同窓会事業企画委員会が提案し、前NHK技研所長の藤澤秀一氏(1979年電気電子卒)の協力を得て実現しました。
NHK放送技術研究所は、わが国でラジオ放送が始まった5年後の1930年に設立され、放送技術全般にわたる日本で唯一の研究所として、放送の進歩発展に関わる調査・研究を基礎から応用まで一貫して取り組んでいます。研究員は約250名、上智大学理工学部の卒業生も在籍しています。
見学の最初は、藤澤秀一氏・ 金子浩之氏(電気電子卒)の案内で8Kスーパーハイビジョンシアターです。映画館の様な大スクリーンにロンドンオリンピックの映像や長岡の花火大会の映像が映し出されました。現行のハイビジョンの16倍にあたる3300万画素の超高精細映像と22.2マルチチャンネルの三次元音響の迫力は想像を超えるもので、初めて体験する臨場感に圧倒されました。2016年の試験放送、2020年オリンピックイヤーの8K放送を目指しているとのことです。
次は、昨年9月から運用開始されたハイブリッドキャストの説明を受けました。放送とインターネットを融合したサービスで、HTMLの使用により高画質画像やアニメーションなどを放送と同じ品質で大量の情報を表示することを可能にしたものです。今後はスマートフォンやタブレットのアプリを利用し、さらに高度な放送連動型のサービス開発が進められています。
さらに立体テレビの開発状況も、片山美和氏(電気電子卒)に説明していただきました。いわゆる3Dではなく、めがねなしで複数のカメラ映像を用いる多視点画像からインテグラル立体像を生成する手法です。微小レンズ群からなるレンズアレーを撮影・表示の双方に用いて立体像を再現する立体映像システムです。さらなる映像の高精度化やデータ処理速度の向上などで実用化が近づいてくるという印象でした。
最後に、テレビの上に設置したセンサカメラを利用して、視聴者の表情から番組への反応を類推するシステムも見ることができました。山内結子氏(電気電子卒)より研究内容の説明をしていただきました。番組のどの場面に笑いや驚きなどの表情の変化が出たかを分析するもので、将来は視聴者の嗜好にあった番組を自動的に選定できるかもしれません。
全体で2時間弱の見学会でしたが、テレビの可能性を広げる様々な試みは興味深く、もう少し時間が欲しかった印象でした。