本講演会はASF2025「理系ソフィアンのつどい」開催に伴う講演会となります。
本稿をお読みになる前に[ASF2025]「理系ソフィアンのつどい」のご案内(第1弾)をご一読いただけますと幸いです。
「コロイドサイズのビルディングブロックからなる機能材料」
講演の概要
大きさが数ナノメートルから数百ナノメートルの粒子はコロイドと呼ばれます。我々の肉眼では見えないほど小さな粒子ですが、このサイズの粒子が集合体を形成すると、光学的・力学的に興味深い性質を示します。本講演では、コロイドサイズの粒子をビルディングブロックとして用いた構造発色性材料とゴム材料という、異なる機能を持つ材料について紹介します。
まずは構造色について。一般にはあまり知られていませんが、自然界にはコロイドサイズの秩序構造によって鮮やかな色を示すものが数多く存在します。例えば、昆虫、魚、植物、哺乳類、鉱石などが、様々なメカニズムで構造色を発現します。私の研究では、コロイドサイズの白色粒子と黒色粒子を混合することで、さまざまな色の構造色を発現できることを明らかにしました。本講演では、この構造色が私たちの生活の中でどのように応用できるかについてもお話しします。
次にゴム材料について。高分子を架橋した材料にコロイドサイズの粒子を導入すると、驚くべき力学特性を示すことが知られています。その代表例がタイヤです。生ゴムを加硫という方法で架橋し、その高分子網目の中にカーボンブラックやシリカ粒子を導入すると、強靭な材料が得られます。私の研究では、高分子網目の中にサイズの揃ったコロイド粒子を秩序だった状態で導入すると、無色透明で強靭な材料が得られることを発見しました。さらに、このようなゴム材料が人工血管の開発にも応用できる可能性についてもお話ししたいと思います。
本講演では、コロイドサイズの粒子をビルディングブロックとすることで生み出される、多様な機能を持つ材料の世界を紹介します。
講師紹介
講師:
竹岡 敬和(名古屋大学 大学院工学研究科 准教授)
プロフィール:
1991年上智大学理工学部化学科卒業、1996年同大学院理工学研究科博士後期課程修了博士(工学)。その後、マサチューセッツ工科大学物理学科博士研究員、横浜国立大学工学部助手、名古屋大学大学院工学研究科助教授、2007年より同准教授。受賞は1995年米国薬物送達学会 最優秀論文賞、1996年上原生命科学記念財団ポストドクトラルフェロー、2001年財団法人「手島工業教育資金団」手島記念研究賞(手島工業技術研究賞)2009年花王研究奨励賞2014年永井科学技術財団学術賞、2015年高分子学会三菱化学賞2016年市村学術賞など。
