たくさんの翻訳をしてこられた中で、ご自身が「この本はおすすめ!」というご本を2〜3冊 教えてください。
気楽に読むのでしたら『酔っ払いが変えた世界史』、少し硬派ですがハンニバルも登場するのでお奨めは『世界史を作ったライバルたち』(原書房)。ハンニバルのライバルは無論、ローマのスキピオ・アフリカヌスです。また、フラ語の同級生の山川洋子さん、一年先輩の谷口きみ子さん(1973年卒)も共訳者として参加して下さった『王妃たちの最期の日々』も読み応えがあります。3月に出る予定の『Les Grandes Enigmes de l‘Histoire』(邦題未定)も、歴史ウンチク物としてなかなか興味深い内容ですのでお楽しみに。
会報で後輩たちに何を伝えたいと思われますか。
私の学生時代はリーチ先生やロベルジュ先生が大変に厳しく、膨大な量の仏文を自分で考えて書く、という宿題がありました。提出すると、間違いがある文に印がつけられて返されました。どこが間違っている、という指摘はなく、自分で間違いを探して訂正し、マルをもらえるまで何度も再提出するのです。おかげで、仏語の文章を分析的にとらえる癖がつきました。これは、誤訳のない翻訳を目指すうえで大変に役立っています。リーチ先生とロベルジュ先生が退かれた後も、伝統は続いているようで、後輩の松永りえさん(1995年卒)に何度か共訳をお願いしたのですが、とてもしっかりしているので感心しました。若い時の苦労は実を結びます! かく言う私は、課題だけをこなす、積極性に欠ける学生だったのですが… Si la jeunesse savait, si la vieillesse pouvait!
神田順子さん(かんだじゅんこ)さんのプロフィール
フランス語通訳・翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科に1970年入学、2年間の留学を経て1976年卒業。訳書に、ラズロ『塩の博物誌』(東京書籍)、べルニエ=パリエス『ダライラマ 真実の肖像』(二玄社)、ヴァンサン『ルイ16世』、ドゥデ『チャーチル』(以上、祥伝社)、共訳書に、デュクレ『女と独裁者―愛欲と権力の世界史』(柏書房)、ビュイッソンほか『王妃たちの最期の日々』、ラフィ『カストロ』、ゲニフェイほか『王たちの最期の日々』、ビュイッソンほか『敗者が変えた世界史』、ビュイッソン『暗殺が変えた世界史』、ゲズ『独裁者が変えた世界史』、バタジオンほか『「悪」が変えた世界史』、ドゥコー『傑物が変えた世界史』、ソルノン『ロイヤルカップルが変えた世界史』(以上、原書房)、コルナバス『地政学世界地図』(監訳、東京書籍)などがある。