そして、最後がこの2幅の「山水図」、片方は夏で、片方が冬景色なのですけれども、違う絵師が描いています。
この2幅も違う、白茶地に雲宝模様の「天地裂」に、紺地に牡丹の「中廻し」。
そして10幅全部に共通の「風帯(ふうたい)」(上からぶら下がっているもの)と、上下にある「一文字」と呼ばれる裂が、同じ浅葱色の牡丹模様です。
幕府贈呈品の掛軸の表装裂に関する記録が、なんと幕府の外国方の文書に残っていて、これが決め手となったのです。
幕府、大政奉還と漠然と考えていたのですが、幕府の外国方の役人は、これからフランスやドイツと付き合っていくのに「どのような贈呈品を贈ったかの記録がないと明治政府は困るだろう」と、この文書を引き渡したのです。幕府の役人の有能である証拠で、その後出版もされているのですね。