研究のこれから
NHK日曜「美術館」の続編ともいうべき番組(90分)が2022年1月に放映されました。このときに、私がずっと探していて見つからなかった、万延元年の遣米使節贈呈品の一つ、狩野中信筆「富士飛鶴図(ふじひかくず)」が日本に戻っており、富士山世界遺産センターの所蔵になっていることが判明しました。
またパリ大学のINALCO教授のエステル・ボーエルさん(注)に著書を送ったところ、礼状をいただき、交流が始まりました。2022年8月に来日し、私の家を訪ねてくださいました。ボーエルさんは日本語が非常にご堪能です。
「お母さまの「山水画」は「やはり贈呈品ではなかったか、もしかしたら当時のプロイセン国王に贈られたものであったのではないか、それを調査しましょう」という話になって、わくわくしています。
(注) Estelle Bauer, professeure et directrice du département des Etudes japonaises à l’Institut national des langues et civilisations orientales (INALCO).
最後にご紹介するのは、私が古美術店で偶然見つけて手に入れた「紙雛」、色が非常に鮮やかな小品です。
吉備国際大学東洋美術修復学の馬場秀雄研究室で保存修理していただいたときに、色鮮やかなのは良い顔料(絵の具)を使っているからということでした。日本画でも良い顔料が手に入ったというのは奥絵師時代であったかと想像しています。
私は父の仕事の関係でずっと海外が長かったので自分のお雛様というものがありませんでしたが、この「紙雛」の絵が来てくれたときに、何か曽祖父が応援してくれているような気がして、とても嬉しく毎年2月にこの絵を飾っています。
(講演 おわり)
山田久美子(やまだくみこ)さんのプロフィール
立教大学名誉教授。
上智大学外国語学部フランス語学科 1975年卒。
広島大学大学院英語学英文学専攻博士後期課程中退
ハーバード大学客員研究員(フルブライト)
Ph. D. (University College, Dublin)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授を定年退職。
◆同窓の皆様へ◆
「偶然の出会いに導かれて、専門とは全く違う分野の研究の道に進みました。
若い方たちもどんどんご自分の興味にしたがって、ご関心のある分野に手を広げていただきたいと思います。」