リーチ先生の贈り物

ルーツをたどる  治田敦 (1977年卒)

好きなフランス語 Je te regarde comme pour la première fois

初めまして、私、治田敦、ロベルジュ先生、リーチ先生の教え子です。

宮本亜門演出
ミュージカル「太平洋序曲」
芸者の女将

卒業後は劇団四季で「オペラ座の怪人」「美女と野獣」「ライオンキング」等、退団後は「エリザベート」を10年つとめ、宮本亞門演出「太平洋序曲」ブロードウェイ公演、近年では黒澤明原作のミュージカル「生きる」に出演。現在は俳優業のかたわら、歌や芝居を教え、後進を育てています。

歌を教えていて本当に良かったなと思うのが、実は、フランス語を勉強したことです。歌で何より大事なのは舌の力を抜くこと。

その最大の武器が仏語のRの発音、つまり、舌根を震わす訓練なのです。

リーチ先生直伝の江戸弁巻き舌トレーニング;「ばっきゃロー…るロー…ロー…」これで私は仏語R発音をマスターいたしました。

いきなりですが、日本人はハンディキャップを背負わされています、声楽的に。

頭蓋骨を地球儀に例えると、左の耳たぶから鼻の頭、そして、右の耳たぶへの線を赤道とすると、発声は絶対北半球に響かせなくてはなりません。さもないと声は通らないし、音程も悪くなります。

しかし、日本語は南半球に響かす言語ですから、北半球語;仏語、英語、韓国語等に比べ、大いなるハンディを背負わされています。

そう、日本人は声楽的に言えば、

“言語障害者”なのです。

しかし、悲観することはありません。声楽にはタングトリルという巻き舌メソッドがあり、生徒にはうがいをする時、少しずつ水を減らして舌根脱力訓練させています。

勤勉な日本人、トレーニングさえ積めば、北半球発声は容易に習得できます。

時代劇「助太刀屋助六外伝」
悪家老 片岡右京左衛門

そして、私はと言えば…そんなことをせずとも全く大丈夫なのです。そう…

リーチ先生、ありがとう、
「ばっきゃろー」を教えて下さって…!


リーチ先生はユニークというより、とにかくヘーンな先生でした、勿論いい意味で。見てるだけで、思わずほほが緩むような。

スペイン語みたいな舌先を震わすより舌根を震わすフランス語Rの発音は難しいのですが、「ばっきゃろー」のおかげで、割に短時間で習得できました。

もう一人、ロベルジュ先生って方も素敵な方で、本当に楽しく充実した四年間でした!

上智大学フランス語学科同窓会・会報No. 41(2023年2月25日発行)より再掲

※掲載内容は発行当時の情報です。
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