上智大学のフランス語学科を2009年に離れてヨーロッパへ移ってきて、2023年夏には早くも14年。アイルランドに落ち着いて満10年になります。この間、何冊かのフランス語の本を出版することができました。
いずれも白水社から、『フランス語 語彙をひろげる7つのテクニック』(2012年8月)を皮切りに、
雑誌「ふらんす」の連載を元にした『Eメールのフランス語[増補版]』(2015年5月)、
『フランス語で話す自分のこと日本のこと Communiquer en français, le Japon et moi 』(2017年5月)
『中級者のためのフランス語語彙力アップ1500題 Le vocabulaire français en mouvement 』(2019年12月)
そしてこのたび出版した『40の名詞からひろげる中級者のためのフランス語 40 mots dans tous les sens 』(2023年5月)です。
『Eメールのフランス語』ではメールや、場合によってはカードや手紙で「書いて伝える」方法を扱いました。
それに対して、『フランス語で話す自分のこと日本のこと』では相手との話し言葉のやりとりのなかで、どのように自分の考えを組み立てて伝えるのか、質問をもちかけられたら、どのように対応すればよいのか、という点に重点をおきました。
組み立てるために使う「つなぐことば」は教科書ではあまり扱われないので、自分自身がフランス語を学習したときに、いちばん苦労した分野だったのです。また、コミュニケーションのやりとりを円滑にする「ストラテジー」や文化的な差異のことに触れるコラムも楽しんで書きました。
さて『40の名詞からひろげる中級者のためのフランス語』では、フランス語のコミュニケーションによく使われる、頻度の高い名詞をとりあげ、それぞれの名詞を土台にして、どんなふうに表現をひろげていくことができるのかをまとめました。
air, bout, cas, cours, effet, face, lieu, moment,point, rapport, sens…。40の名詞は、フランス語を読んでいても、話したり聴いたりするときにも、たびたび登場して、いろいろな姿を見せてくれるものばかりです。フランス語の森のなかで、ひときわ美しく枝を広げている「大きな木々」のような存在です。 冠詞や前置詞、動詞との組み合わせで、異なる意味やシチュエーションを限りなく生み出す力を持つ名詞です。
「名詞と他のことばの組み合わせで、いろいろな意味を生み出す方法」
これはやはり、自分自身がフランス語を学習する道すじのなかで、ひとつひとつ発見し、試行錯誤を重ねて、表現力として実感できた方法だったのです。辞書を眺めるだけでは体系的にまとめられず、手がかりの求めにくい分野でもあります。
読者の皆さんの役に立ちますようにと願いながら本にまとめる作業は、自分自身のフランス語や、そして今は生活のなかで毎日使っている英語の学習プロセスを振り返ることでもありました。
2023年にはフランス語/日本語の通訳としての仕事をお引き受けして、少し新しい景色が見えて楽しかったです。
大阪でフランス語を教える仕事をしている旧友の提案で、YouTubeでこの本を紹介する機会を与えられました。よろしければアーカイブをご覧ください。
https://www.youtube.com/live/n6m1WHx9Rgs?si=9OMQZJOSXAvcQe9B
この本がまた、皆さんのお役に立てれば、とても嬉しいです。