石澤良昭教授 記念講演会「なぜフランス語か」 (5)70年ぶりの快挙:カンボジア人が自分たちの手で修復したアンコール・ワット西参道

民族の誇りを取り戻したアンコール・ワット西参道プロジェクト

参詣者がアンコール・ワットの中央尖塔に向かう出入口となっているのが、この西参道です。
西参道は環濠の水の中に作られた陸橋ですから、水蝕(すいしょく)により石の柱が溶けて流れて上に載っている敷石が「どん」と落ちてしまう。そのため修復が必要になるのです。
オリジナルの石が欠けて取れてしまうことにならないよう、技術の細かいところから慎重に教える人材養成には時間がかかりました。結局カンボジア独立から70年かかって、やっと自前の保存修復ができるようになったのです。

西参道の修復についてもカンボジアの人たちにすぐ「修復工事」というのではなく、一度、実物と同じ石でモデルを別の場所に造り練習をしてから、本番にとりかかるのです。

アンコール・ワット西参道修復の工事現場(1996〜2007年)

数学も教えたり、発掘状況、石積みの状態、石と石のあいだに「ちぎり」といいまして鉄を渡し込む、そういう技術指導から始まりました。参道の擁壁が外へ崩れないように側にL字型のマットレスを入れていったり、右と左がガタガタだった部分を平らにして自然に歩けるようにするために、全部下まで掘り返して、水のところに新しい柱を作って、土砂(客土)を詰め込んで、一番上に敷石をする。そういう仕事の末に、やっと西参道の修復が完成、ということになるのです。

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