ルーツをたどる 異国にてふるさとの訛なつかし…

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ルーツをたどる

 今や3,300名を超えるフランス語学科の卒業生。年代も、暮らしている場所も、フランス語とのかかわりの有無も、その数だけ、さまざまです。「ルーツをたどる」ー できるだけ広く皆さんにお声かけして、お話をうかがうために、この新しいコーナーを立ち上げました。

    佐藤勝彦(1980年卒)

好きなフランス語 C’est la vie!!

高校時代、山口百恵主演で人気を博したテレビドラマ「赤い疑惑」を見た。画面に映る叔母(岸惠子)が住むパリの風景はとても新鮮で、まだ見ぬパリに想いを馳せた。不慮の事故で不治の病になった主人公の回復を願い父親(宇津井健)が贈ったヨットの名前が「L’ESPOIR」、私が初めて覚えたフランス語である。憧れのパリには学生時代に1ヶ月半ほど滞在、出張や旅行でも何度か訪れた。

卒業後は、フランス(語)とは縁遠い米国系のIT会社に就職し30数年を過ごした。大型コンピューターからサーバーへの移行、パソコンやスマホの出現、インターネットによる通信革命等々大きな変化の中、文系出身の技術者として金融機関の多様なシステムを担当した。その影響か現役を退いた今でもITに係るニュースや話題、ガジェット等には敏感に反応してしまう。     

現在は韓国のソウルに住んでいる。60歳を過ぎて初めての海外生活である。IT目線で身の回りを観察すると興味深いことが多々ある。キャッシュレスは当たり前、ポイント付与はレジ横の端末で電話番号を入力する事で済むため、ポイントカードを財布やスマホから取り出す必要もない。デジタル化が進展しその恩恵を享受する一方、時代の流れに取り残されないよう日々パソコンやスマホと格闘している。

そんな中、コロナのワクチン接種では、75歳以上の高齢者に対しては区役所の担当者が保護者宛に電話をし、その場で接種日時の予約が完了したという話を耳にした。デジタル化がこれだけ進む中で「ワクチン狂騒曲」もなく、こんなアナログな話を聞くとホッとする。  この時代、世界中どこにいてもインターネットに接続すれば日本語の動画が見られるし電子書籍も読める。ソウルソフィア会や日本人会の懇親会で日本人との会話を楽しむこともある。しかし身近には日本人がいないので、日本人との日本語での会話に飢えを感じる。そんな時、石川啄木の短歌をふと思い出す。「ふるさとの訛なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」

2019年のソウルソフィア会

上智大学フランス語学科同窓会・会報No. 39(2022年2月25日発行)より再掲

※掲載内容は発行当時の情報です。
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