LVMH と P & G の経験を活かして起業  杉浦莉起さん

(株) DELICE 代表取締役 杉浦莉起さん (1996 年卒) 

上智大学フランス語学科同窓会・会報No. 33(2019年2月25日発行)
および No.34号((2019年8月25日発行)より再掲
※掲載内容は発行当時の情報です。

在学中、フランス語の先生は。 

田中さっちゃん、マダム長谷川先生、ダンディな泉先生、声の素敵な南舘先生、そしてロベ!  新任の井口(原田)先生もいらっしゃいました。一番の思い出は、親友たちとの出会いです。社会人になっても、ママになっても、 ずっと変わらずベストフレンズでいてくれる友人です。 

3 年生の時に留学されましたね。

はい、アンジェに留学しました。初のフランス渡航でしたが、全く困ることなし。同じ大学 3 年で留学した他校の方々とは、レベルが全く違いました。

フランス人もいる寮にいたのですが、わたしより 1、2 年も前からいる 日本人で、一切フランス人との交流がない方もいました。 私はフランス人から部屋に誘われ、自然に友人になりました。彼女たち曰く「話しやすいオープンさがあった」と。 これはロベ式の発音や、マダムのオープンな授業を通じて、自然に培ったフランス語のお陰かなと思いました。

つまり、フランス語学科で学んだのは、単に「語学」で はなく、フランス文化を言語として学び、それが自然と身についていた結果だと実感したのです。 

その留学のために就職活動は出遅れたとか。 

わたしが就職活動をしたときは氷河期でした。出遅れ たこともあり、全くエントリーもできない状況。でもフ ランスに関わる仕事をしたいと思ったときに、フランス 語学科の教授から(マダム)、「フランスは経験者を中途 で取って研修などしない。日本の会社は新人研修をして くれるから、先ず日本の会社で経験を積んで転職のチャンスを狙うのも良い」とアドバイスを受けました。

そこで、はじめはあまり興味もない(笑)会社に入り、夜は 通訳学校に通いフランス語のレベルの維持をはかりつつ、 チャンスをうかがっていました。1 年経った頃にちょうど、念願のファッションブランドで広報のポジションに 募集があり LVMH に応募したのです。

その時に思ったのは、興味のない仕事でしたが、そこでの経験(法人営業)があったからどんな人とも話せる というアピールにつながり、憧れの職を得られた、つまり、 はじめに思い通りにいかなくても、どんな経験でも必ず 意味がありその後につながるものです。 

のちに P&G に転職されますが LVMH には不満が? 

転職の理由は、成長意欲と不満との両方です。大好き なファッションに囲まれ、直属の上司は素敵な方で、本当に大好きな仕事でした。でも一方で、高級ブランドの 世界はとてもクローズなので、窮屈さを覚えることもあ りました。濃密な人間関係以外に、戦略的な仕事をしたいとマスマーケティングに興味をもったときにマーケ ティングの学校ともいわれる P&G を紹介いただいたご縁が繋がりました。 

2010 年には独立します。収入面などでの不安はありま せんでしたか。 

よくお話しするのは、企業に勤めていた時は不満と不 安があったけど(外資ですので実力主義)、独立したら不 満はなくなったけど不安はある、ということです。

ただ、 プロコン(PROS&CONS)でいうと、だんぜん、プロの方 が多いです。実現したかったライフスタイルを今は得ていますから。 子育ての時間と自分の時間をとりながら、やりたい、 また人に貢献していると思えるお仕事をさせていただいています。煩わしい人間関係も、無意味な仕事もしなくて済みます。

一方、コンがあるとしたら、仲間でしょうか。 職場に行くとたくさんの同僚や先輩上司がいます。今は仲間がいても、同じ釜の飯を・・・ではないので、孤独を感じることもあります(が、先日友人が、企業にいてもポジションがあがると孤独だから同じと話していまし た)。収入は、毎月定額に入るお給料ほどには安定しませんが、少ない時間でも勤めていたときよりも多い収入を 得ることができます。 

現在のお仕事は。 

女性の活躍&幸せ応援をミッションにした多角的な事業を行っています。女性活躍やダイバーシティの講演 や企業研修、大手企業にブランディングやマーケティ ングのコンサルティング、女性バランスブランド「The L A D Y」の事業、執筆などです。フランス語を使う機会は 残念ながらありません。 

これから就職活動や転職を考えている方にアドバイスを。 

書籍『いつでも最良を選べる人になる 後悔しない「選び方」の レッスン』 の中でも紹介しているのですが、人生の最期の ときを迎える患者さんがいう後悔の言葉で最も多いのが 「自分をもっと幸せにしてあげれば良かった」。それを伝 える看護師は、「『幸福は自分で選ぶもの』だと気づいて いない人がとても多い」と言っています。 また同じような後悔の言葉で、やらないで後悔するよ りも、やって後悔したほうが良いとは、よく言います。わたしの人生を生きるのは、わたしだけです。誰も代わりは できません。だから、「幸せを選ぶ」という意思をもって、 わたしの人生のオーナーとして、その幸せに最も影響を与 える責任者として(リーダーシップ)、選択の力(エモと ロジ選択:emotional かつ logical な選択)をフルに活用して、誰のものでもない「わた しの幸せ」を選んでいって欲しいです。人生の最期のとき に「自分をもっと幸せにしてあげれば良かった」ではなく、「わたしはわたしを幸せにできた」と思えるように・・・。 

杉 浦 莉 起 ( す ぎ う ら り た ) さ ん の プロフィール

(株) DELICE (デリィス)代表取締役。1996 年フランス語学科卒。
LVMH (モエヘネシー・ルイヴィトン)グループにて CELINE の宣伝広報に携わった後、仏宝飾 ブランド Mauboussin の日本法人設立に参与。P&G ジャパン に転じ、マーケティング部および広報部にて SK- II、パンパー ス、ブラウンジレットなどブランドコミュニケーション戦略を 担い、インフルエンサーマーケティングマネージャーとして新規組織の確立に寄与。最優秀社員賞など表彰多数。
現在は女性 の幸せな活躍を応援。企業研修・講演や女性のキャリアと健康 の啓蒙活動、「結婚マーケティング」などのコンテンツ提供を通じ、もっと素敵なワーク&ライフの実現サポートを行う。私生活では、2児を育てるワーキングマザーでもある。
著書:『いつでも「最良」を選べる人 になる』(ディスカバー 21)、『1 年で成果を出す P&G 式 10 の 習慣』(祥伝社)など。

『いつでも最良を選べる人になる 後悔しない「選び方」の レッスン』 
杉浦莉起さん(1996 年卒)著
(株)ディスカヴァー・トゥエンティワン  本体 1,400 円+税
2018 年 8 月 30 日

本書は一人ひとりが「幸せ」になるた めの指南書。

不安な未来を楽しみに変え るには先ず「わたしの幸せ、を選ぶこと」 だという。 いまは、働き方も、暮らし方、生き方もすべて、自由に選べ る時代。何を選ぶかは自分次第、自分なりのやり方で、人生を カスタマイズしていける一方、自由だからこその難しさもある。

杉浦さんは LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループ で CELINE の宣伝広報を担当。P&G で SK-II、パンパースな どのブランドコミュニケーション戦略に携わった。そのときの LVMH での経験が「エモーショナル選択」、そして P&G での実績が「ロジカル選択」の着想につながる。この感覚的選択と論理的選択のエモ+ロジ選択は、センスが問われる選択などの毎 日の選択だけでなく人生の次のステージが変わる選択などの大 きな選択にも失敗しない選択眼を養うことに役立つ。

就活を始める学生だけでなく転職、結婚やセカンドライフを迎える OG・ OB にも一読をお薦めしたい。

杉浦さんは現在、(株) DELICE 代 表として女性活躍応援の多角的な事業を行っている。二児の母。 

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